コラム

ヘリ無許可有償飛行で逮捕

日本から台湾へ供与したワクチンを輸送したJAL機のパイロットにたいして、台湾の管制官の心温まる交信の話題でテレビに生出演し、久しぶりに明るいコメントをすることができた。しかしその後に、そのままテレビ局に残って、厳しいコメントを収録することになってしまった。
メディアが「セレブ」と形容している経営者が、ヘリコプターを使用して無許可で有償飛行を続けていた航空法違反で警視庁に逮捕されてニュースであった。収録では、二つの問題点を指摘した。有償で旅客または貨物を運送するためには、事業者(経営者)は国から「航空運送事業」の認可を受ける必要がある。またパイロットは「事業用操縦士」という航空従事者技能証明を取得する必要がある。本人は「事業用操縦士」のライセンスは保持していたようである。「航空運送事業」の認可を受けるためには、整備規程、運航規程など厳しい審査項目をうけて合格する必要がある。有償で尊い人命を運送するのであるから当然と言えば当然である。
JALやANAなどの日本の航空会社は35年以上乗客の死亡事故はゼロである。これは世界的にみても驚異的なことである。これは国(国土交通省)と航空会社が官民一体となって「そこまでやるのか」というくらい厳しい安全対策を実施している成果だと思われる。航空会社で安全推進の組織を担当しているときは、国の対応は余りにも厳し過ぎると常々感じていたが、今になって国の航空関係の委員の視点からすると、このくらい徹底しないと無事故を続けることは難しいと感じるようになった。
ヘリや小型機については、残念なことにここ数年来、事故が頻発しており、国も危機感を懐き、平成28年12月に「小型航空機等に係る安全推進委員会」を設置した。私も当委員会のひとりとして意見を述べている。委員会では、へリや小型機の安全対策を検討し、きめ細かい対策を実施している。そのなかにあって、当該会社は昨年の12月と今年の3月に事故を起こしている。
今回の当事者が逮捕に至ったことは、国の委員のひとりとして、非常に残念に思っていると同時に、航空会社の安全対策とは異なり、ヘリや小型機の安全対策を徹底することの難しさと、今一度再構築することの必要性を痛感した次第である。

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