コラム

「気候変動」から「気候危機」

報道は連日、コロナ関連のニュースでほぼ埋め尽くされている。そのなかで、一部報道機関は、昨日(12日)に閣議決定した2020年版の「環境白書」について報じた。注目すべきは、いままで「気候変動」としていたものを「気候危機」としていることである。今回の「白書」では、気候変動の問題を、世界が直面する新型コロナウイルスの感染拡大と同様の危機と捉えて敢えて「気候危機」としたことである。

実際、日本国内をみただけでも、この数年、いままで経験したことのない局地的な豪雨により多くの人命が失われている。地球温暖化が予測以上に進んでいることが、その要因のひとつと考えられる。地上の湿った大気の上空に、蛇行したジェット気流によりもたらされた冷たい空気によって、局地的に積乱雲などの雨雲が急激に発達した結果発生した集中豪雨の例である。

46億年という地球の歴史からすれば、私の40年のフライトはほんの一瞬に過ぎないが、その非常に短い時間の流れの中の1990年代と2000年代では、ジェット気流の位置や蛇行の様子がかなり違ってきたことを感じていた。ジェット気流は、地球の自転と大気の対流によって生じる壮大な大気の流れである。温暖化によって対流が変わってきたために、ジェット気流の流れも変わってきているのではないかと想像している。ジェット気流だけではない。今日(12日)の日本付近の地上天気図をみても、以前と変わっていることに気付く。以前の梅雨前線は北太平洋高気圧とオホーツク海高気圧との境に形成されることが多かった。今日の天気図ではオホーツク海高気圧の姿はなく、大陸で発生した日本海にある高気圧と北太平洋高気圧とによって梅雨前線が形成されている。

「白書」がまとめた「気候危機」は、新型コロナウイルスによる危機の陰に隠れてしまっている「地球環境」にも目を向ける必要があるという警告でもある。特に私たちの子供や孫の世代には、更にその影響が大きくなると予想される「気候危機」に対して、一人ひとりができることから取り組むとともに、脱炭素へ向けての、総合的なエネルギー政策への理解も必要になってくる。

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