コラム

みずほ銀行のシステム障害と危機管理

みずほ銀行で2月28日に起きた障害は、ATMに入れたキャッシュカードや通帳が戻らないという異例の不具合で利用者の不安を広げた。想定の甘さからシステムの自衛機能が裏目に出た形で、顧客を長時間、店舗に足止めするなど、事後対応のまずさが浮き彫りになった。早急に再発防止策を講じなければ信頼回復は難しい。といった内容の報道がこの二日間続いた。

日本社会もデジタル革命が急速に進むことが予想される。私は経営団体や企業の幹部向けの講演では、いつも「危機管理には無駄も必要だ」と申し上げている。今回のみずほ銀行のケースのように顧客に多大な迷惑をかけないためには、具体的に次の二つの「無駄」が必要である。そのひとつは、想定外の事象にたいする“Contingency Plan”(不測の事態に備える複数のプラン)。もうひとつは、BCP(Business Continuity Plan:想定外の事態が発生しても、事業、業務を続けるプラン)である。この二つは、想定外のことが起こらなければ「無駄」になってしまう。効率を追求する経済社会にあっては、なかなか「無駄」を抱えることは経営者にとっては、勇気と覚悟が要ることであろう。顧客も投資家も企業を評価する際に、想定外にも対応できる「無駄」を備えているかどうかも、大切な視点のひとつである。

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