コラム

森会長発言と「鬼滅の刃」

森会長の発言に関する報道が連日続いている。その一連の報道から、ふと浮かんできたのが「鬼滅の刃」である。「鬼滅の刃」は漫画本も映画も空前のヒットとなった。この物語は「鬼」を退治するという「善が悪に勝つ」ということが大まかなストーリーである。人々の正義感にうったえるものがあり、コロナに打ち克つことを重ね合わせることもでき、あらゆる階層に浸透して、大ヒットしている背景ではないか。
森会長の発言は、その発言部分だけを切り取れば、確かにオリンピック憲章に反するものであり、女性蔑視と受け取られても仕方がない。東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長としては不適切であったことは明白であり、正義を大切する視点からも厳しく批判されて当然である。この批判の高まりは、「鬼滅の刃」がヒットした要因と心理的共通部分があるのではないかと感じた。
ここで連日の報道から一歩距離をおいて考えてみたい。人を判断する場合は、そのひとがどのような発言するかの他に、その人がどのような行動をしてきたかを知る必要がある。むしろ、行動こそがその人の本質を表している。但し、組織のトップ、政治家は発言の一言が、行動より影響が大きい場合がある。その実例が今回の森会長の発言である。
行動についてみれば、森氏は日本のスポーツの振興に甚大な努力をしてきている。オリンピックの招致、とりわけ2019年のラグビーワールドカップの日本招致は、森氏あってこそ実現できたと言われている。しかし、発言問題で、森氏が会長を続投するかどうかは現時点では不透明である。
我々は人を判断する際には、その人の発言だけでなく行動も知る必要がある。人は良い面も悪い面もある。要は焦点の当て方次第である。出来事も悪い面だけでなく、良い面も必ずあるはずである。情報洪水の時代にあって、メディアやSNSの情報を鵜呑みして判断するのではなく、自律心をもって自分で判断する習慣をつけたい。

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