コラム

菅首相の推薦図書の主人公コリン・パウエル氏について

パウエル氏には湾岸危機、湾岸戦争から国務長官時代まで私は大変興味をもっていたことは前回のブログで述べた。特にパウエル氏のリーダーとしての危機管理について勉強させられた。海部首相の中東五カ国公式訪問、イラクに人質になった邦人の救出フライトを担当するために、民間人ではあるが、中東情勢、軍事情報、国連の安保理の動向等の情報収集をしていた。なかでも緊迫した中で、特に安全に直接かかわる軍事情勢であった。途中の経過はここでは省略するが、結果的にアメリカを中心にした多国籍軍が、湾岸戦争を圧倒的な勝利に導いた。その要因には、周到な軍事戦略的な準備をはじめとして、CNNなどのメディア等を利用した情報戦略、更に万が一戦争になった場合に備えて、米軍に2隻しかない病院船を紅海に待機させるなど、万全な措置をとっていた。これらの措置の全てを最高責任者であるパウエル氏が指示したかどうかは定かではないが、氏の意図が含まれていることには間違いはないと思っていた。優れた軍人というものは、戦争は避けるべきだという考えを持っている。「政治、外交、経済、金融などあらゆる手段を講じて戦争を避けるべきだ。ただし外交の背後には軍事力が存在する」というパウエル氏の考えは、菅首相推薦の著書でも触れられている。戦争は避けるべきであっても、外交などあらゆる努力を講じても解決できない場合を想定して、軍のトップとして万全の備えをしたのであろう。

パウエル氏は冷静なリダーシップとしての信望があり、1996年の大統領選挙に向けての世論調査では、共和党の支持者をはじめ幅広い層からの圧倒的な支持があったが、本人は出馬しなかった。共和党からはロバート・ドール氏が出馬したが、選挙結果は民主党の現職のビル・クリントン大統領が再選した。

余談になるが、私は湾岸危機、湾岸戦争を直接、間接的に経験し、平和な日本では想像できない厳しい現実を突きつけられた。それは、戦争状態になると、軍事力に裏付けされた通貨しか通用しないということである。邦人救出フライトで、ヨルダンのアンマン空港に着陸した際の給油代金は、米ドルの現金しか通用しなかった。添乗の運航管理者が、ポシェトに一杯詰め込んで持参した100ドル紙幣で支払っていた。湾岸諸国はディナールという通貨が多い。そのディナールの公定為替ルートは600円前後であるが、両替屋では米ドルしか受け取らず、しかも5円前後の交換レートになっていた。

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