東京電力福島第一原子力発電所での処理水の海洋放出について、危機管理の視点から私が取材をうけました。その内容が今朝の読売新聞朝刊の科学欄に載っています。
安全管理、危機管理の参考にして頂ければと思います。その記事をそのまま紹介いたします。
見出しは「愚直」大切にしてこそ
【東京電力福島第一原子力発電所で8月に始まった処理水の海洋放出も約30年に及ぶ計画だ。事故で溶け落ちた燃料デブリの取り出しが遅れれば、さらに期間は延びる。事故
を起こした東電に本当にできるのか。国内外から厳しい視線が注がれる。
原子力安全推進協会の講師などを務める危機管理の専門家、小林宏之さん(77)に会った。元日本航空機長。死者520人を出した1985年のジャンボ機墜落事故を間近で体験し、一つのミスも許されない中で企業再生を進めた日々を知る小林さんは、「東電の現場で働く方々も同じでしょうね」とおもんぱかる。
日航が苦境を乗り越え、乗客死亡事故ゼロを30年以上続けられているのは、「愚直さ」を大切にしてきたことが大きいという。
それぞれの職場でマニュアルを読み込むだけでなく、一つ一つの言葉の裏側に思いを巡らし、「暗黙知」(先人が経験や失敗を通じて体得した知恵)からも学ぶ。効率が悪くても時間がかかっても、「一番大切なのは安全」と自分に言い聞かせて確認を繰り返す。「『なぜそこまで?』と笑われるほどの愚直さを忘れないでほしい。日航でもできたのだから、東電もできるはず」と小林さんは言う。
30年といっても、一日一日の積み重ねだ。処理水の放出が計画通り進んでいるかどうかを日々点検するのは、私たちの仕事でもある。小林さんの言葉を肝に銘じたい。】