長い文書になってしまいますが、これからの時代、AIの進歩、更にチャットGPTなどで様々な情報が洪水のように溢れるなかで、「何が重要か」「本質は何か」を冷静に問う習慣をつけていくことの大切さの参考になれば、幸いです。
危機管理を一言で表すと「一番大切なものを守るマネジメント」である。
つまり、重要度の選択が危機管理の第一歩である。
和歌山で起こった岸田首相襲撃事件と、宮古島付近の海上での自衛隊ヘリの事故の背景、事故原因等は、今後慎重に究明されることになる。その事件、事故に至る経緯にはそれぞれ様々な事情があるはずであるが、純粋に危機管理の第一歩である重要度の選択(欧米の危機管理で重要視されているPriorityの選択)の視点から考えてみる。
<岸田首相襲撃事件>
自民党総裁であり首相である本人自らが選挙区に赴き、選挙民と直接触れ合うことは選挙に勝利するという目的のためには大切であることは誰も疑う余地はない。今回の事件は警備の面からの考察ももちろん必要であるが、危機管理の本質を考えてみることにする。
安部元首相襲撃事件と、今回の岸田首相襲撃事件とは、危機管理の本質の視点では全く異っているということである。
安部元首相のケースは、自民党内にはいまだに大きな影響力をもっていたが、機能としては国会議員の一人である、ということだけである。岸田首相の場合は、国の行政のトップであるとともに、国の安全保障面でも、陸海空の自衛隊を指揮するトップである。つまり日本の運命を左右する機能を持った唯一の人間である。このことを冷静に考えた場合「何が一番重要であるか」が自ずと分かるはずである。日本のメディアはこうした本質的なことには一切触れていない。5月に広島で開催されるG7に参加する各国は、日本の危機管理に疑問を抱いているに違いない。
<陸上自衛隊ヘリ事故>
自衛隊に関しては部外者である私の指摘は的外れかもしれないないが、敢えてこの事故に関しても重要度、組織の危機管理の視点から考察してみることにする。
事故機には着任早々の師団長はじめ、師団の幹部3人が搭乗していた。尖閣列島をはじめ沖縄海域は中国軍が連日活発な活動をしており、トップである師団長、幹部が沖縄の島々の地形等を自分の目で見て把握しておくことは必要なことである。着任早々には、まず組織の全体の掌握、非常時体勢を把握してから、地形の視察をするという順序も考えもある。
師団長には、中国軍の活動が心理的に視察を急がせた可能性は十分に考えられる。3人の幹部にも、緊張感を共有させる必要性を感じていた可能性もある。しかし、トップとそれを支える幹部が同乗して、万が一事故に遭遇した場合、緊急事態に対応する組織体制について、検証する必要があるのではなかろうか。ここでも、その時、何が最も重要かという重要度の選択に注目したい。
事故原因はまだ不明であるが、当時の天候からすると、現段階では、重大な機材故障、パイロットのヒュ-マンエラーの関与等が原因の可能性として考えられる。仮にパイロットのヒュ-マンエラーとした、その時のパイロットの心理はどうであったか。
トップと幹部3人が搭乗しており、その緊張感と気遣いに注意力が配分されて、通常操作の抜けや間違い、注意力が阻害された結果、ヒュマンエラーに繋がったということも、可能性のひとつとして考えられる。
これは、私自身の経験から推測している。私は、首相特別便の運航や皇族が搭乗された便を何度か担当した。定期便のフライトとは異なる神経を使うこともあり、そのフライトで一番怖かったことは、首相や皇族ということで、常にない神経を使ったために通常の操作、注意力が疎かになり、間違いを起こすことであった。それだけに、定期便の運航以上に、基本操作、注意力の配分に神経を注いだ。