日本時間の21日にアメリカのデンバーで起きたユナイテッド航空のエンジントラブルに関して、21日の夕方から今日(23日)の午前まで、民放テレビの各局に電話取材、オンライン出演、生出演を含め9回出演しました。取材や収録では20~30分位コメントしますが、そのなかから放映されるのは、僅か10~15秒程度です。実態を知って頂くために、少し専門的になってしまいますが、できるだけ専門用語は使用せずに、その概要と実態を説明します。
CNNニュースなどの映像から以下のようなことが可能性として推定できます。むき出しになったエンジン本体と地上の落下物から、エンジンの前方部分の破損、具体的には高速で回転しているファンブレードが破損し、それによって、エンジンカバーや、エンジン内部の部品を破壊した可能性が考えられます。
これに、類似したトラブルは、昨年の12月に沖縄那覇空港で起きたJALの777-200機のケースと似ています。このケースでは、運輸安全委員会の調査により、ファンブレードの疲労破壊が確認されています。国土交通省は同型エンジンを搭載するファンブレードの点検を国内航空会社に指示し、各航空会社とも不具合は発見されていません。また国土交通省は、従来の6500回飛行毎にエンジンをエンジンのメーカーに送っての定期検査(非破壊検査)の間隔を、半分の3250回毎に短縮することなど含めきめ細かな指示しました。航空会社独自でも1500回毎の非破壊検査も実施しています。
今回、アメリカでのエンジントラブルをうけて、国土交通省は同型のエンジンを搭載している航空機を運航するJAL13機、ANA19機の777-200型機に対して、対策の必要性の有無を検討する間、運航停止を指示しました。ただし、777-200型機でもトラブルのあったPW-4000型以外のエンジンを搭載している777-200型機については、運航停止の措置はとっていません。
この二つの事例からも分るように、日本の国土交通省、航空会社は海外の当局に比べ、非常に厳しくきめ細かい、予防的措置をとっています。その成果もあり、日本の航空会社では35年間以上、乗客の死亡事故ゼロが続いています。これは、世界的にみても驚異的なことです。
飛行機は何重もの安全対策、厳しい整備・点検をしています。しかし、トラブルはゼロにはできません。そこで、パイロットは、毎年あらゆるトラブルに対応する厳しい訓練と審査を受けって合格した者が乗務しています。また、ふたつあるエンジンのうち、ひとつが故障しても、ひとつのエンジンで安全に着陸できるようになっています。今回のユナイテッド航空の機長も、管制官とのやりとりの音声、そして乗客が機内から撮った着陸の映像からも、冷静で安定した操縦が伺われます。(図はプラット&ホイトニー社のPW-4000型エンジンの概要図です)